垂水の街を歩いていると、ふと目に留まる「動画撮影禁止」の看板。

以前その前を通りかかった時、私は「少し気難しいお店なのかな」と勝手に想像して通り過ぎてしまいました。

しかし、先日近くで美味しいランチを楽しんだ後、どうしても気になり、妻と一緒にその扉を叩いてみることにしました。

そこは「九郎右ヱ門珈琲店(くろうえもんこーひーてん)」という、古民家を再生した洋館のような趣を持つ、素晴らしい空間でした。

土地の記憶を保存する、小さな歴史資料館のような空間

以前訪れた「スイス喫茶」も素晴らしい昭和レトロな雰囲気でしたが、このお店の魅力はまた少し異なる感じでした。

一歩足を踏み入れると、壁には垂水、塩屋、舞子といった、この地域の懐かしい風景を切り取った古い写真がいくつも飾られています。

それは単なるインテリアではなく、この土地が歩んできた時間を静かに物語る「記録」そのものでした。

一昨年、お義父さんが他界し、一人になったお義母さんのサポートのため神戸に移住してきましたが、こうして自分の歴史とこの地域の歴史が今交差していると思うと、なんとも言えない感慨深い気持ちになりました。

このお店は、ただコーヒーを飲む場所という以上に、街の記憶に触れ、時の流れを静かに味わうための場所なのだと感じます。

自分の「好き」を迷わず選べる、緻密なコーヒーチャート

このお店の親切な点は、コーヒーの特徴が驚くほど分かりやすく表示されていることです。

メニューには、酸味、コク、苦味、香りが一目でわかる丁寧なチャートが添えられています。

豆選びの迷いがなくなり、初めて訪れる人でも自分にぴったりの一杯を安心して頼めると思います。

メニューの写真も載せたかったのですが、お店からのお願いということで、メニューの写真載せていません。

自分は酸味があまり好きではないのでマンデリンを、妻はサントスを注文しました。

当初はコーヒーだけの予定でしたが、デザート類が美味しそう…。

葛藤の末に、2人で1つ「クロッフル」を注文しました。

運ばれてきたクロッフルは、外はカリカリの食感で、シナモンの豊かな香りが鼻をくすぐります。

ザラメ糖の食感と冷たいアイスクリームの組み合わせも申し分なく、こだわりのコーヒーとの相性は抜群でした。

階段の上り下りと、スタッフとの温かな一幕

お店を切り盛りされているのは、ドリップを一手に引き受けるオーナーのご主人と、配膳を担当するスタッフさん。

建物が洋館風のレトロな構造ゆえか、昔の階段ってすごく急勾配にできていますよね。

スタッフの方がトレーを抱えて階段を上り下りされる姿を見ていると、足腰は大丈夫かな…と少し不安になりました。

私たちが訪れた際、たまたまその日が初出勤だというスタッフさんがいらっしゃいました。

「今日から初めてなんです」とはにかむ彼女に、私も「僕らも今日初めて来たんです」と返し、場がふわりと和む瞬間がありました。

東京から遊びに来ていた姪っ子が訪れた時はあいにく閉まっていましたが、妻が早速写真を送るほど、ここは「大切な人を連れてきたくなる」魅力に満ちた場所です。


店舗情報:九郎右ヱ門珈琲店(くろうえもんこーひーてん)

予算の目安 1,000円 〜 2,000円前後

基本情報

  • 住所: 〒655-0893 兵庫県神戸市垂水区日向2-2-7
  • 電話: 078-786-3792
  • 営業時間: 12:30 〜 20:00(L.O. 19:30) ※営業時間は変動する場合があります。
  • 定休日: 水曜・土曜・日曜・祝日(不定休あり)
    ※現在は週4日程度の営業となる場合があるため、訪問前に公式Instagram等の確認を推奨します。
  • お支払い: 現金
  • アクセス: JR・山陽「垂水駅」東口から北へ徒歩約4分。
  • 注意事項: ドリンクワンオーダー制・動画撮影禁止・予約不可・駐車場無し

まとめ

一度は敬遠しかけた「九郎右ヱ門珈琲店」は、今では垂水でランチをした後の「食後の定番」になりそうです。

こだわりのコーヒーを味わいながら、壁に飾られた古い写真とともに街の記憶を旅する時間。

スイス喫茶が「居心地」のレトロなら、ここは「歴史」のレトロ。

そんな垂水の層の深さを再発見できた、素晴らしい午後のひとときでした。